声かけ

 4月の大本山増上寺といえば、宗祖法然上人の御忌(ぎょき)、つまり年回忌が毎年行われており、今年は先代住職のこともあってお詣りして参りました。受付を済ませて控え室に通していただき、お茶の接待をいただきました。こちらの接待はその道の方、あるいはお寺の大黒さん方(婦人会の方がお手伝いなさっているのです)ですからと、きちんとお礼を申さなければ…と、なるべく丁寧な受け答えを心がけました。
 それが無事できた、と安堵し、御法主にお勤めいただいた法要にも参列することができ、何だかとても安心して(このところ、自分が勤めることばかりだったので…当たり前か)三田線に乗りました。この地下鉄は高校時代、学校へ行くのに使っていたので懐かしさもあったのですが、結構混んでいる…そして観光客と思しき、巨体の方が4人ほど近くにいて、ちょっと緊張していました。

 そして何駅か過ぎて、彼らが下車しました。その時!「ちょっとすいません、通してください、ゴメンねゴメンね」と、なんとも(体に似合わない)小声で彼らが降りたいサインを出したのです。私は咄嗟に道を開け、彼らが通っていったのですが、その時「ありがとう」とはっきり言ったのを聞きました。しかし私は…無言で通してしまったのです。

 なんたること!日本に来て、いかにも日本的な格好をしている私が、日本的に接してくれた彼らを無言で行かせてしまった…。さっきの奢りを見透かされたようで、自らの至らなさ、情けなさに愕然として帰ってきたのでした。
 ということで、それを忘れない戒めとして、この記事を書いています。ゴメンね、外人さん。せっかく声をかけてくれたのに。驚いたけれど嬉しかったです。日本を楽しんでね!

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自己肯定感(1)