ギガに惹かれて

 先日、行って参りました「国宝鳥獣戯画のすべて」展。もちろん欠損が無いわけではないでしょうけれど、「甲乙丙丁の4巻揃って」というのは初だそうで、去年から楽しみにしておりました(去年はコロナで延期)。入場者数もかなり制限されていたようで、予約は売出し2・3日でかなり埋まってしまったとのこと。朝8時30分から開館して最終入場は19時、閉館は20時であっても、その枠すら埋まってしまう。美術館って本来は月曜休館なのですが、それも半休にして開催されていました。
 もっとも、準備や輸送にかけた費用などはそれなりに回収しなければならないので、人数は入れたいところでしょうから、「もっと長期間やってくれないかなぁ」というのが正直なところです。

 さて内容は、もう「面白かった」です。有名な「カエルとウサギの相撲」の場面もそうですが、私はその右で応援しているウサギが好きなんです。ガッツポーズしているような子ですね(自身の性格を表している?)。線でサッと描いてあるようですが、実にイキイキしている。

 有名な「甲巻」は、前に動く歩道が設置してあって、止まれない仕組み。待っている間は「あんなにノロノロ動いて〜」とか思っていたのに、自分が立つと速いこと。しっかりと見られたのは確かですが、絶妙なスピードでしたね。
 それにしても、この鬱々とした世相の中で「誰を傷つけることもない、明るくほのぼのと、笑顔になれる」機会というのはあまり多くないように思います。あれが描かれたのは平安末期〜鎌倉時代(100年くらいの間)と言われているので、世相としても明るくなかったのかも知れません。そんな中、漫画みたいなものを描き、ちゃんと保管して国宝にまでしているって、なかなか凄いことだと思うのです。

そして、一番のお気に入りは丁巻にあるんだろう?

 はい、丁(第4巻)の「法要の図」ですね。これは動物ではなくて人間の法要の姿なんですが(元の構図は甲巻にあり、再度パロっている)、この人物たちが結構だらけている、というかとぼけている…だらしない?んです。お経本に顔をうずめていたり、何だかニヤニヤしながら読経していたり、お喋りしてたり。
 何となく私達、「昔の坊さんたちは真摯に真面目に読経したり修行に取り組んだ」のだろうというイメージを持っていますが(その成果を伝えられている訳ですから、それは当然なのですが)、実態としては「こういう場面もあったんだろうな」と思うと、ついニヤリとしてしまうわけです。深読みかも知れませんが、「坊さんも人間。仏様に近づこうとしている人間」という伏線があるような気がします。それ自体が日本仏教なのかな、と。
 ちなみに、住職も別日に馳せ参じ、奇しくも同じお土産(額装した絵)を買ってきました(笑)。

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